新型コロナウイルス(COVID-19)によって、小売業全体が大きな影響を受けています。
今回はファッションブランドにどんな影響があったかをまとめていきます。
実店舗の売上高の推移
始まり:免税売上高の減少(2020年1月末頃~)
まず、ウイルスが中国で広がり始め、中国から海外への団体旅行が禁止された2020年1月末頃~。
このころから、インバウンド客の消費≒免税売上高が著しく減少し始めました。
特にこの時期は春節(旧正月)のため、特に中国からの旅行客が多く、ファッションブランドは例年通り高い売上を見込んでいました。
ただし個人旅行で来日する旅行者はまだある程度いた様子です。
大手百貨店が発表している免税売上高の前年比は
2月:7割前後減少 (大丸松坂屋:-74.6% 高島屋:-69.9% 三越伊勢丹:-63% )
3月:9割前後減少 (大丸松坂屋:-96.8% 高島屋:-92.5%)
と、3月にはほぼ0に近い数字になりました。
この時点でファッションブランドがどれくらい影響を受けていたか?というと、そのブランドの売り上げがどれくらいインバウンド客に依存していたかによって異なります。
インバウンド比率の低いブランドはそこまで大きな影響を受けていませんでした。
しかしインバウンド比率が高いブランドは、この時点ですでに売り上げが大きく減少していました。
次の段階:国内売上高の減少(2020年2月末頃~)
日本国内でも外出を控えるようになり始めた2月末頃から、国内売上高も減少を始めました。
3月には商業施設の時短営業や一時休業が始まりました。
特に3月下旬、東京などの自治体で外出自粛要請が出されたことで、週末営業を中止する商業施設が増えました。
実際に大手百貨店の全体売上の前年比は、
2月:1~2割減少 (大丸松坂屋:-21.5% 高島屋:-12.9% 三越伊勢丹:-15.8% そごう西武:-6.5%)
3月:3~4割減少 (大丸松坂屋:-44.1% 高島屋:-34.6% 三越伊勢丹:-35.4% そごう西武: -33.4%
と減少幅が大きくなっています。
4月に入ってからは緊急事態宣言が出され、先日その対象も全国に拡大しました。
それを受けて多くの施設は当面の間休業となっています。
ファッションブランドも基本的には入っている施設に合わせて営業しています。
※一部、施設は営業していてもブランドが自主的に休業している店舗もあります
そのため3月以降、休業店舗が増加し、4月中旬現在ではほとんどの店舗が休業となっています。
つまり、売上はほとんど0です。
最終段階?:店舗の営業再開(2020年5月頃~)
緊急事態宣言が5月末まで延長されましたが、地域によって取り組みが変わっています。
首都圏や大阪などを含む13の特定警戒都道府県ではこれまでと同じ取り組みが必要とされていますが、それ以外の県では段階的に経済活動が再開されています。
実際にゴールデンウィーク後から、営業を再開する百貨店やショッピングモールが出てきています。
特定警戒都道府県の中でも、財務上限界を感じて営業を再開する商業施設やファッションブランドもあるようです。
したがって5月~6月にかけて、徐々に店舗は再オープンしていくでしょう。
しかしながら、どの程度の早さでお客さんが戻ってくるかはまだわかりません。
特にインバウンドへの依存度が高いブランドは、売上の戻りは遅くなるでしょう。
また再開した後も、コロナ感染者の増加状況によっては、再度の経済活動の自粛が必要になるかもしれません。
ウイルスがなくならない以上、完全に以前の状態に戻るまでには時間がかかりそうです。
同時に、店舗における感染予防にどう取り組んでいくか、各ブランドに判断が求められています。
他国の回復状況
世界的には良いニュースもでてきています。
中国や韓国など一部の地域では状況が落ち着いてきたこともあり、4月頃から営業を再開しているブランドもあります。
営業を再開したブランドは、前年比を取れるくらいまで回復してきているようです。
こんなスーパーなニュースもあります。
WWD:「エルメス」、中国で移転オープンした店の売り上げが1日で2億8000万円! 新型コロナ禍をものともせず
WWD:「ルイ・ヴィトン」、営業を再開した中国で売り上げ50%増
営業を再開できる地域が広がってくるといいですね。
Eコマースの台頭
店舗が閉まっているといっても、ほぼすべてのブランドはオンライン通販サイト(Eコマース)を持っています。
店舗の売り上げをそっくりカバーできる規模ではないでしょうが。。
多くのブランドが、店舗にあった商品の在庫をEコマースに集め、Eコマースの売り上げを拡大させようと躍起になっています。
そして実際にEコマースの売り上げは急拡大しています。
これまでラグジュアリーブランドに関してはEC化率が低い状態が続いていましたが、これを機に、Eコマースへのシフトはより一層進んでいくでしょう。
ただし、外出自粛が続いている中で、ファッション消費に対する意欲がどこまで続くかは疑問です。
実際に今売れているのは、家で楽しめるアイテムが多いでしょう。
ファッションブランドにとっては大きな危機であることに変わりはありません。
その他の影響
商品生産の遅れ
中国やヨーロッパの工場が稼働していないため、商品の納期遅れ・生産中止などの問題も発生しています。
2020年春夏~秋冬への影響は確実です。
この先いつ供給が回復するか、現在のところ見込はたっていません。
少ない商品ラインナップで営業せざるを得ないという状況になりそうです。
株価の落ち込み
2月後半くらいから、ファッションブランドの株価が軒並み下がり始めました。
主に中国国内の店舗の休業に伴うものです。
4月現在、株価は底からは少し戻りましたが、まだ完全に回復するには至っていません。
この低い株価を利用した買収も起こってくるかもしれません。
企業のキャッシュを守るための取り組み
上記のような売上状況のため、体力のない企業は倒産していくことが考えられます。
実際に3月にはローラアシュレイの経営破綻のニュースもありました。(参考:WWD)
今後、より多くのブランドや商業施設が経営破綻していくと思われます。
また比較的余力のある企業も、できるだけキャッシュをセーブするよう守りの姿勢に入ります。
人的資源の面では
・採用の凍結
・社員の解雇
・給与のカット
などがすでに行われています。
また、それ以外の部分に対する投資にも消極的になっています。
例えば、この状況下で新しい店舗を作ったりするブランドは少なくなるでしょう。
ファッション業界における経営破綻や従業員解雇などのニュースはこちらの記事でまとめています。

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